最新研究が明かす本当に身につく学習法『使える脳の鍛え方』書評

書評

今回は少し長いので、興味あるところだけでも見ていってください!

では、早速行きましょう!

ほとんどの人は学びを誤解している

今回は『使える脳の鍛え方』という本を紹介していきます。

本書は簡単に言えば、科学的に正しくて効果がある学習法とはどんなものなのか、について論じています。

実証データはもちろん、分かりやすくするためのストーリーも交えながら、論を展開しています。

アカデミックな内容なので、読んでてちょっとお堅いなぁと感じるかもですが、新しい発見ができることは間違いないです。

翻訳された本はお堅くなりがちだからな

本書を読む前、勉強法が巷に溢れ過ぎてて、僕はどれが本当に正しいのか分からなくなっていました。そこで科学に裏付けられた勉強法が知りたいと思い、この本を手にしました。

そして、科学的に正しい勉強法を詳しく、そして効果的に学ぶことができました!

最強の勉強法「テスト効果」とは?

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勉強法でいちばん効果が高いとされるのがこのテスト効果(想起練習や検索練習とも言われる)です。やり方は簡単。覚えたい内容をテストするだけです。

これに対し、効果が低いとされるにも関わらず、やっている人が多いのが集中学習です。これはいわゆる詰め込み学習ですね。例としては、定期テスト前に一夜漬けで勉強する、同じページをひたすら読み返す、などです。

集中学習はやりがちだけど、実は効果は薄いぞ

想起練習と集中学習を比べた研究が紹介されています。

1978年の研究では、集中練習(詰めこみ学習)の場合、直後のテストでは高得点を記録しても、想起練習に比べて忘れるのが早いことが判明した。

初回のテストから二日後に二回目のテストをおこなうと、集中練習のグループは、初回のテストで思い出せたことの約半分を忘れていた。一方、同じ期間に集中練習ではなく想起練習をおこなったグループは、13%しか忘れなかった。

 つまり、長期的に見ると想起練習の方が圧倒的に記憶への定着率が高いのです。

テストは学習の定着度を測るという目的で用いられがちですが、それだけに使うのはもったいない。記憶の定着にもぜひテストを活用してみてください!

復習の最適なタイミングを知っておこう!「間隔練習」

間隔練習(分散学習とも言われる)は、復習のタイミングを一定期間空けて再度同じ問題を解くというものです。

この復習のタイミングというのが重要で、実は、忘れる前に復習するのは最適な復習タイミングとは言えないのです(しないよりはマシですが)。

最新の研究では、ちょうど問題の答えを忘れた頃がベストだと言われています。

では具体的にはどのタイミングがいいか。

これにはエビングハウスという心理学者が行った古典的な実験が役に立ちます。その実験によると、新しい情報の記憶の保持率が20分で58%、1日で33%、1週間で約20%になることが分かりました。

エビングハウスの忘却曲線は有名だな

よって、記憶が落ち込む20分後に1回目、次の日に2回目、1週間後に3回目、1ヶ月後に4回目の復習を行うのがベストと言えるでしょう。これは復習曲線と言われ、記憶の落ち込みがほとんど無くなるとされています。

ずっと同じ単元を勉強してはいけない?「交互練習」

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交互練習とは似た問題をひたすら解くのではなく、全然違う種類の問題をバラバラに解いていくという練習方法です。

例えば、数学を勉強するときに、ひたすら二次関数の問題を解くのではなく、二次関数→ベクトル→数列のように単元を変えていくのです。

これにも実証データがあります。

ふたつのグループに分かれた学生が、四つの立体(三角柱、回転楕円体、球錐、半円錐)の体積の求め方を学んだ。そのあと、ひとつのグループは立体の種類ごとに(三角柱の体積計算問題を四つ、回転楕円体の問題を四つというふうに)ひととおり練習問題を解いた。もうひとつのグループも同じ問題を与えられたが、内容は立体ごとにまとまっておらず、順不同だった(交互練習)。

ここまで読んできたかたは、もうその結果に驚かないだろう。立体ごとに問題を解いた(集中練習)学生の平均正答率が89%だったのに対し、交互に解いた学生の平均正解率は60%だった。

ところが、一週間後の最終テストでは、種類別に解いたグループの正答率20%に比べ、交互に解いたグループの正答率は63%だった。最初に学んだときには成績が伸び悩んだ交互練習だが、最終テストの結果はむしろ勝っていたのだ。

僕はこれを知ってからは、読書をするときはずっと同じ本を読むのではなく、心理学の本を30分、経済学の本を30分、歴史の本を30分というように、ジャンルを混ぜて読むようにしています。交互練習にもなり、なかなか飽きなくなるのでおすすめです。

能力不足で能力不足に気づかない「ダニング=クルーガー効果」

能力不足の人は自分の能力不足に気付いていない、ということが研究で分かっています。これは「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれています。

以下が研究の内容です。

それを発見した実験では、学生に論理学のテストをおこない、自分の成績を見積もらせたところ、最初の実験で、能力の低い学生ほど実際の成績とかけ離れた評価をつけるという仮説が立証された。

平均成績が下から12%の学生たちは、自分の全般的な論理能力を68%と推定したのだ。

これは前にブログでも書いたレイク・ウォビゴン効果と似てますね。心理学では結構似たような効果が出てくるんで、関連付けると覚えやすいです。

愚か者は自分の愚かさに気づかない。皮肉な話だな。

本書では「ダニング=クルーガー効果」を防ぐための対処法として、

主観的な体験ではなく外部の客観的な物差しを基準に用いて、現実世界に即した判断ができるようにすることだ。

と述べています。
例えば、テスト結果を頻繁に確認したり、自分でも小テストをこまめに行ったりするのが良いのではないでしょうか。

勉強法は組み合わせて使え!「ダイナミック・テスト」

テスト効果の有用性は前回述べましたが、それに加えて間隔練習や省察(振り返り)と言った効果的な方法を盛り込んだ、「ダイナミック・テスト」というものが紹介されています。
ダイナミック・テストのやり方は次の3つのステップで構成されています。

  1. 実体験か、筆記試験で、知識や技術の足りない部分を知る。
  2. 省察、間隔練習、その他の効果的な学習法で集中的に能力を高める。
  3. また自分でテストし、何がうまくなったか、そしてとくに、何の練習が足りないかに注意を払う。 

ダイナミック・テストでは自分の弱点を知り、改善を促すので、たいていの分野でほぼ限界まで能力を上げることができます。

自分でテストを行うのは面倒ですが、効果の高さは感覚的にも分かるので、やらなきゃなと思いつつ、やっぱり中々できないんですけどね笑

暗記科目に最適「記憶の宮殿」

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最後に効果が高いとされる記憶術を紹介します。「記憶の宮殿」と呼ばれる記憶術で、世界記憶力選手権でチャンピオンになった方も使っている方法です。

どんな方法かと言うと、自分が覚えたい内容を決め、その内容を構成する要素をある空間に配置していくというやり方です。

チョットナニイッテルカワカラナイ

という方のために補足します。

  1. 例えば、勉強法を覚えたいという時、まず配置したい空間を決めます。ここでは自分の寝室としましょう。
  2. そして、覚えたい要素を絞り込みます。今回はテスト効果、間隔練習、交互練習、ダニング=クルーガー効果、ダイナミック・テストを覚えたい要素とします。
  3. そして、それぞれの要素を部屋に配置していきます。
  4. この時、その要素に関連したものに配置すると思い出しやすくなります。テスト効果はとても重要だから大きいベッドに配置して、間隔練習は一定の間隔で鳴る目覚まし時計に配置して…みたいな感じで配置していきます。もちろん実際に置く必要はなく、イメージするだけで大丈夫です。
  5. 部屋に要素を配置しておくことにより、思い出すときにベッドにはテスト効果があったなあ、というように思い出しやすくなるという手法です。

あんまり要素が多いものは使えないんで、工夫する必要はありますが、かなり効果が高いので、余裕があればやっといてもいいかもですね。

さいごに

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勉強法の本はこれまでいくつか読んできましたが、今まででいちばんアカデミックかつ詳しい内容で読み応えがありました。

本書を読んでからはテスト効果や間隔練習といった科学的に有用な練習法がしっかりと理解できました。また読む前と比べると勉強が楽しくなり、記憶への定着率も上がりました。

勉強法について知りたい!という方は一度読んでおいて損はないですよ!!

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