ノーベル経済学賞受賞の著者から学ぼう!『ファスト&スロー・上』

書評

今日も本の紹介です。

どんな本?

今回は行動経済学の名著『ファスト&スロー』の上巻を紹介していこうと思います。

少し前に読んだ本なのですが、めちゃくちゃ面白いです。

まずは、

行動経済学ってなんやねん!

という人のために少し説明させていただきます。

行動経済学は、心理学と経済学を合わせたような学問です。

経済学っていうのは人間は完全に合理的な決定を下す、という考えのもとで研究する分野なのです。

ただ、実際は人間ってそこまで合理的じゃない時もある。

それはなぜだろう。どういう時に合理的じゃなくなるんだろう。

というのを解き明かしていくのが行動経済学という学問です。(ざっくりですが)

大体分かったけど、この行動経済学を学ぶことで何が得られるの?

って思いますよね。

色々ありますが、大きなメリットとしては世の中を新たな視点で見れるようになります。

また、本書では「バイアス」や「ヒューリスティック」(後で説明します)という言葉がよく出てきます。

本書を読めばどれだけ私たちが、「バイアス」や「ヒューリスティック」に囚われているかが分かるでしょう。

上下巻に分かれていてかなり長いのですが、読んで損をしない本の1つです。

著者について

著者はノーベル経済学賞も受賞した行動経済学の第一人者であるダニエル・カーネマンです。

この行動経済学という分野は比較的新しい分野で、行動経済学者として初めてノーベル賞を受賞した人でもあります。

まあ簡単に言うとすごい人だな

「システム1」と「システム2」

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本書では人間は「システム1」と「システム2」という2つのシステムで情報を処理していると考えています。

それぞれの定義は以下のようなものです。

「システム1」は自動的に高速で働き、努力は全く不要か、必要であってもわずかである。また自分の方からコントロールしている感覚は一切ない。
「システム2」は複雑な計算など頭を使わなければできない困難な知的活動にしかるべき注意を割り当てる。システム2の働きは、代理、選択、集中などの主観的経験と関連付けられることが多い。

まあ簡単に言うと無意識の本能をシステム1理性をシステム2としているわけです。

システム1はとても便利なのですが、バイアスやヒューリスティックを生じてしまうという弱点があります。


本書では、この便利なシステム1の弱点を深掘りしていくといった構成になっています。
システム1が本書の主役であると、著者も述べています。

「プライミング効果」とは

行動経済学では有名な「プライミング効果」というものがあります。

これは、プライム(日本語では先行刺激と訳される)によって、人間の行動は無意識に変わるというものです。

例として、こんな実験が紹介されています。

これについては、ジョン・バルフらが行った、早くも古典と言うべき実験がある。

この実験では、ニューヨーク大学の学生(18~22歳)に5つの単語のセットから4単語の短文をつくるよう指示する(たとえば、彼/見つける/それ/黄色/すぐに)。

このとき1つのグループには、文章の半分に、高齢者を連想させるような単語(フロリダ、忘れっぽい、はげ、ごましお、しわなど)を混ぜておいた。この文章作成問題を終えると、学生グループは他の実験に臨むため、廊下の突き当たりにある別の教室に移動する。

この短い移動こそが、実験の眼目である。実験者は学生たちの移動速度をこっそり計測する。するとバルフが予想したとおり、高齢者関連の単語をたくさん扱ったグループは、他のグループより明らかに歩く速度が遅かったのである。

つまり、高齢者を連想させるプライム受けて、無意識に歩く速度が遅くなったというわけです。

 どうですか?無意識の力がどれだけ強いか、ということですよね。

このプライミング効果は、マーケティングやビジネスの分野など様々なところで使われています。

しかし、この存在を知っている人はほとんどいないのです。

あなたも知らないところでプライミング効果を受けている

「利用可能性ヒューリスティック」

まずは「ヒューリスティック」について説明しましょう。

「ヒューリスティック」とは簡単に言うと、ステレオタイプ(過去の経験など)に基づいて判断するという行為のことです。

例として、

  • あの人はメガネを掛けているから頭が良いんじゃないかと判断する
  • テレビが昔うまくいった企画を使い続ける

といった感じですね。

ここで「利用可能性ヒューリスティック」とは「事例が頭に思い浮かぶたやすさ」で判断することです。

簡単に言うと、難しい問題を簡単な問題に置き換えて処理することです。

本書の例を紹介します。

注意を惹きつけるような目立つ事象は、記憶から呼び出しやすい。
例えば、ハリウッドのセレブの離婚や政治家の浮気スキャンダルなどがこれにあたる。
そこであなたは、映画スターの離婚や政治家の浮気の頻度を多めに見積もりやすくなる。

この他には、テロ事件を見て飛行機事故を過剰に怖がったり、殺人事件が少し増えると最近は物騒だなどと考えたりとかですね。

飛行機異常に怖がる人っているよな

普通に生きて行くぶんにはあまり問題はないのですが、このような理論を知っておくだけで、少し賢く生きれるとは思いませんか?

「バイアス」を取り除くには

バイアス - 文字と木製のブロックからの単語 ストックフォト

まずは知っている人も多いとは思いますが、バイアスについての説明ですね。

人間というのは完璧ではないので、ときどき認知エラーを起こします。

で、この認知エラーには顕著なパターンがいくつか存在していて、それをバイアスというわけです。

まあ脳のバグみたいなもんだな

例えば分かりやすいのが、「ハロー効果」と言われるバイアスです。

これは、ある1つの目立つ特徴から人物の印象を決定するというバイアスです。

容姿が優れている人は必ずしもそうとは限らないのに、頭もよくて、仕事もできると判断してしまう、という感じですね。

他にも、

  • 「確証バイアス」:自分の意見と合う情報だけを集めるバイアス
  • 「現状維持バイアス」:現状維持が1番良いと考えるバイアス
  • 「計画錯誤」:計画を立てるときに無理な計画を立ててしまう

など、色々あります。

バイアスを取り除くにはどうすればいいんや!

と思う方もいると思います。

この回答として、一番いいのはバイアスの存在を知ることです。

知っていると知らないでは、ほんとに全く違いますから。

あとは統計学や数学を学ぶこと。

自分の直感と反している論理や統計を受け入れるのはなかなか難しいんですが、これらを学ぶことによっていくらかマシになります。

今回はこのへんで!

明日は下巻の紹介です!

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