『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』書評

書評

今日は経済学の本の紹介です。早速いきましょう!

どんな本?

今日はエンリコ・モレッティ著『年収は住むところで決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』を書評していきます。

ちょっと前に読んだ本なので、内容は忘れている部分も多いのでご了承ください🙏

まずはこのタイトルですよね。めちゃくちゃ惹かれるタイトルじゃないですか?

え?住むところで決まるの?

ってなりますよね。本書ではそこのところを詳しく解説しているんで、タイトル買いもありだと思います。

本書を読むことで得られることとしては、未来を予測するための視点でしょうか。

というのも、本書ではアメリカの雇用やイノベーションがどう変遷していったか、そしてこれから起こることを予測しています。

日本でもアメリカとほぼ同じことが起こると予想できますから、知っておけば絶対に損はしません。

経済学に興味がある方、未来に少しでも不安がある方はぜひ読んでみてください!

中流層が消える!?

インターネットの普及により、雇用にも様々な影響を与えました。無くなる仕事がある一方で、新たに出現した仕事もたくさんあります。

さて、ここでひとつの疑問が湧きます。

「インターネットは私たちを豊かにしたのか?」

という疑問です。

これに対しての本書の答えは、

労働市場の空洞化と中流層の消失は、一時的な現象ではないし、アメリカだけの現象でもない。先進国では、どこでも見られる現象だ。

オーターは、1993年以降にヨーロッパの主要16カ国の低賃金・中賃金・高賃金の雇用がどのように増減したかを調べた。すると、すべての国で中賃金の雇用が減り、低賃金と高賃金の雇用が増えていたという。

とありました。

つまり、インターネットの普及により格差がさらに広がったと言えます。

アメリカや中国の格差問題はよく問題になってるよな

技術が進歩しても、新たな問題が出てくるってわけですね。しょうがないんでしょうけど。

日本ではあまりこのことを実感できないですが、アメリカなどではかなり顕著に表れています。豪邸のすぐ近くにスラム街があるのが普通だったりするそうですから。

ハイテク関連の雇用の「乗数効果」は絶大

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まずは「乗数効果」について。乗数効果とは、ある1つの雇用が生まれると、それに伴いその地域の雇用が増えるというものです。

ハイテク関連の雇用には、なんと5倍の乗数効果があることが分かっています。

つまり、ハイテク関連の雇用が1つ生まれると、長期的には、その地域のハイテク以外の産業でも5つの新規雇用が生まれるのです。

この現象が起こる理由として、ハイテク企業で働いている人が高給取りであることと、この分野の企業が寄り集まることが多いことが挙げられます。

これからはやっぱりハイテクの時代ですね~。

アメリカのカリフォルニアなどに富と人口が集中しているのは乗数効果が要因なんだな

給料は学歴より住むところで決まる

まずは、引用です。

この二つの表からわかる最も衝撃的な事実は、最上位グループの都市の高卒者の収入がしばしば、最下位グループの都市の大卒者の収入より高いことだろう。

ボストンの高卒労働者の平均年収は6万2423ドル。これは、フリントの大卒者の平均の1.4倍だ。サンノゼの高卒者の平均年収は6万8009ドル。最下位グループの都市の大卒者に比べて1~2万ドル多いケースも珍しくない。都市間の格差があまりに大きく、学歴による格差を飲み込んでいるのである。

ここから浮き彫りになるのは、アメリカにおける賃金格差が社会階層よりも地理的要因によって決まっているということだ。

本当は表があれば分かりやすいんですが、流石にそれは載せられないので、気になるかたは買ってみてください。

要約すると、金持ちな州の高卒者は、貧乏な州の大卒者よりも年収が高いことが多々あるということですね。

これはアメリカならではの現象ではあるんですが、住むところで年収が変わるというのはこれから顕著になっていくと予想されます。

日本でも東京と大阪への人口の集中が問題になっていますが、アメリカはそれ以上の問題を抱えているというわけです。

「引き寄せ」のパワー

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アメリカでは、イノベーションハブ(ハイテク企業が多く集まる都市)への人口の集中が加速しています。具体的にはボストン、ニューヨーク、サンフランシスコなどですね。

これらの都市に会社を移転するのは、地価が高くつき、一見コストが高くなりそうな気がしますよね。しかし、それを補って余りあるメリットが大きく分けて3つもあるのです。

その3つを簡単に説明します。

厚みのある労働市場

1つ目は厚みのある労働市場です。

イノベーションハブは豊富な人材が集まっていることから、企業にとって優秀な人材を獲得できる確率が高まります。そして企業がイノベーションハブに集まると、それに伴い優秀な労働者がイノベーションハブに集まってきます。このループが繰り返され、イノベーションハブへの集中が加速するというわけです。

例えばオンラインで交際相手を探すときに、ユーザー数が多いサービスを使ったほうが、ユーザー数が少ないサービスを使うよりも、理想の相手を見つけられる確率は上がりますよね。なぜなら、相手の候補数が多いから。

これと同じ理屈で、イノベーションハブに会社を建てるのは合理的なわけですね。

ビジネスのエコシステム(生態系)

2つ目はビジネスのエコシステムです。まずは引用です。 

アメリカのイノベーションハブの大きな強みの一つは、資金調達をしやすいことだ。ラテンアメリカ諸国では、新興企業に投資される資金の総量が少ないうえに、古い考え方の投資家が多く、出資先の新興企業の創造性を奪ってしまうケースが珍しくない。

アメリカのもう一つの強みは法制度だ。ラテンアメリカ諸国のなかではビジネスに好意的なブラジルとチリでさえ、役所の官僚体質と複雑な法規制が原因で、新しい事業を立ち上げることが困難だったり、新規参入のコストが予測できなかったりするケースがある。その点、シリコンバレーやシアトルに来れば、ハイテク関連の新興企業にとって活動しやすいエコシステム(生態系)が整っている。

 つまり、ビジネスがしやすい環境が整っているってわけですね。自由の国アメリカですからね〜。

これについては日本も少しは見習って欲しいな

知識の伝播

3つ目は知識の伝播です。これについては以下の文が分かりやすいです。

さまざまな研究によると、創造性の持ち主が交わり合うと、互いに学び合う機会が生まれてイノベーションが活性化し、生産性が向上する。そうした知識の伝播・拡散も、イノベーションハブに身を置く働き手と企業が享受できる大きな恩恵だ。

心理学で言う「感染理論」みたいな感じですかね。

優秀な人は周りに良い影響を与え、貧しい人は悪い影響を与えるというわけです。

都会に住むのは色々メリットがあるが、優秀な人が多いというのもかなり大きいな

大学進学はハイリターンの投資

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大学には行っておいた方がええで

とよく言われますよね。ひろゆきさんもよく言ってます。

でも、大学に行くメリットってあんまりピンとこないんですよ。僕自身は、

まあできるだけいい大学行くかー

みたいな感じで適当に大学を決めました笑

では、実際大学に行くことによってどれくらいメリットがあるのか?

もちろん大学に行くことによるメリットは色々ありますが、今回は年収についての研究を引用します。アメリカのデータなんで、日本とは若干ずれがあるとは思いますが、まあ概ね同じ傾向でしょう。

大学進学は最も割のいい投資の一つだ。たとえば、高校生の親が子どもを大学にやることの価値を認めず、学費を負担する代わりに、同額の株式や債券を贈ったとしよう。この若者は、大学に進学するより、株式投資や債券投資で収入を得るはうが経済的に潤うのか?

マイケル・グリーンストーンとアダム・ルーニーの研究によれば、大学進学とそのほかの投資の「利回り」を比べると、大学進学より有利な投資を見つけることは難しい。大学進学の年間利回りは、インフレ調整済みで15%以上。これは、株式投資(7%)や、債券、金、不動産への投資(いずれも3%未満)が実際に記録してきた利回りを大きく上回る。賢明な投資家なら、大学進学に投資すべきなのだ。

しかも、投資のリスクの問題もある。人的資本に対する投資は、ほかの投資に比べて利回りが高いだけでなく、おおむね安全性も高い。

もし「大学進学」という銘柄の株式が上場していれば、ウォール街のアナリストの間で超人気銘柄になっていただろう。

大学進学にかなりのリターンがあることは明白ですね。

まあ高校生の時点で投資なんて考え方をできる人はなかなかいないと思いますが笑

移民は起業する確率が3割も高い

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日本では移民の受け入れがまだまだ進んでいません。

そもそも、移民の受け入れってメリットあるの?

と思う人もいるかもしれません。

本書では、日本のハイテク企業がここ20年で衰退した大きな理由として、移民の受け入れに問題があるとしています。アメリカは積極的に移民を受け入れることで、優秀な人材を獲得する一方、日本では法的・文化的・言語的障壁により、外国の人的資本の流入が妨げられてきたのです。

見出しにもあるように、アメリカの移民は非移民より起業する確率が30%も高いことが分かっています。スティーブ・ジョブズ、ヤフーの共同創業者ジェリー・ヤン、Googleの共同創業者サーゲイ・ブリンも移民だったのです。

そこで、本書ではこのようなことを述べています。

こうした点を考えると、昨今の移民論議は的はずれに思える。議論は移民規制強化論者と規制緩和論者の神学論争と化しているが、本当に重要なのは、移民をどれだけ受け入れるかではなく、どのような移民を受け入れるかだ。高い技能をもたない移民が入ってくれば、技能レべルが同程度のアメリカ人の賃金水準が下がり、アメリカ社会の所得格差に拍車がかかる可能性が高いだろう(実際にどの程度の影響があるかは、経済学者の間でも意見がわかれている)。しかし、高技能の移民がやって来れば、好ましい影響が生まれる可能性が高い。

つまり、経済学的視点からは「優秀な移民は積極的に受け入れるべきじゃね?」という結論になるわけですね。

日本は移民を受け入れない文化が根強いですから、このままいくと衰退の一途をたどる可能性は高いです。なんとか頑張ってほしいものですけど。

さいごに

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いやーなかなかのボリュームでした。最後まで読んでくださったかたお疲れさまでした笑

本書を読んで、日本の未来、アメリカの未来を新しい視点で見れるようになりました。

日本はビジネスにおいて、衰退の一途を辿っているのは事実です。これからの日本をもっと考えなきゃいけないなーと思いつつ、世界的に見ても日本って平和と豊かさではトップクラスですから、いい面もあるんですよね。

よって、アメリカみたいな国を目指すのもちょっと違うのかな、とも思うわけです。難しいですね。

まあ日本の未来についてはまた別の機会に詳しく書くと思うぞ

というわけで今日はここまでです!

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